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那覇家庭裁判所 昭和48年(少)16号 決定

少年 R・K(昭二八・二・一一生)

主文

この事件について少年を保護処分に付さない。

理由

(非行事実)

少年は大麻輸入業者でないのに

1  昭和四七年一二月六日午後一時頃、在沖米空軍嘉手納基地内に米軍機C5型○○一○号で大麻約四〇・七グラムを本邦内に持ち込んでこれを輸入し

2  前記日時頃、前記基地内の空港旅具検査場で通関手続の際前記大麻約四〇・七グラムを着用のズボンのポケットに隠匿していながら、同空港の旅具検査官に対しその旨申告せず通関しようとし、もつて税関長の許可を受けることなく前記大麻を輸入しようとしたが、同空港係官に発見されてその目的を遂げなかつたものである。

(適条)

1  の事実について 大麻取締法四条一項一号・二四条一項二号

2  の事実について 関税定率法二一条一項一号、関税法一〇九条二項

(主文決定の理由)

少年は、沖繩に在住する父母のもとを離れてハワイ在住の祖父母、叔父D・Kと同居し、ハワイ在○○○○○○カレッヂに在学中の者であるが、同カレッヂは、教養課程であるため将来は引き続き修士課程に進学する予定である。この度の来沖はクリスマスの二週間前から正月にかけて冬休みに入るので両親面会のために来たが、来沖の際不法に大麻四〇・七グラムを所持し、嘉手納空港で税関に申告せず本邦に密輸入しようと考え、これらの所為が違法であることを充分承知しながら自分が喫うために持ち込んだもので麻薬に対する安易な考え方を示しているといえよう。

少年が大麻を吸い始めたのは昭和四七年一、二月頃からであり、動機については特に理由はなく、友人から喫つたらいい気持だといわれ好奇心から初めたもので、これまでは登校日は吸つてなく、週末の休みに一日普通煙草のサイズより小さい位のを一本吸つていたようであるが本件で逮捕されて以後吸引してないが、中毒症状(禁断症状)はないとのことである。

麻薬が乱売されている当地の社会状況が軍人、軍属の行為に大きく起因していると考えられる点、麻薬の危険性等を考慮するときは刑事処分による責任追及も考えられなくもないが、しかし、少年、保護者ともに本件を深く反省し、少年は以後吸引をしない旨決意し、保護者は今後吸引させないよう充分指導し母親が少年と共にハワイで生活し、保護指導を強化していきたいと積極的な姿勢を示している点、本件当時の生活態度が乱れていたものとも認められず、今後少年に再非行反覆の懸念があるものとは考えられないこと等、上記のように母親がハワイに行き少年と同居して指導を強化する予定であり、特に少年の環境調整の必要もあるものとは認められない。

以上の諸事情を総合すると、少年の健全な育成を期するために保護処分に付する必要はないと認められるので少年法二三条二項により主文のとおり決定する。

(裁判官 島袋平正)

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